iFR, FFRとCFRの虚血診断の整合性 -JUSTIFY-CFRの結果から-

レポート Hospital Clínico San Carlos, Spain 後藤 園香先生
監修 戸田中央総合病院 心臓血管センター内科 中山 雅文先生

はじめに

現在、ワイヤーを使用した冠動脈の生理学的指標としては、測定の簡便性などから圧指標である瞬時血流予備量比(instantaneous wave-Free Ratio: iFR) や冠血管予備量比(Fractional Flow Reserve: FFR)が多く測定されている。しかし、過去には冠動脈血流予備能(Coronary Flow Velocity Reserve: CFR、CFVR) といった血流速度に関する指標も多く測定されていた。FFRと、iFRおよびCFRの間で虚血診断が乖離することが報告されている。Petracoらは、iFRとFFRでどちらがよりCFRに近い指標であるかを虚血診断の乖離から評価したJUSTIFY-CFR studyで報告している1

CFRとは

CFRは昔からある指標ではあるものの、測定を行っている施設は限られているため簡単に説明する。CFRは冠動脈の流速の測定が必要である。iFRやFFRは圧データから求めるため、現在汎用されているPhilips社のVerrata Pressure Guide Wireをはじめ他社のプレッシャーワイヤーも流速を計測することはできない。Philips社のComboWire XT Guide Wireを使用し、薬剤負荷を用いてCFRとFFRを同時に計測することができる。

CFR=(狭窄遠位部での)最大充血時の冠血流量 / 安静時の冠血流量

で求められ、狭窄遠位部での安静時と薬剤負荷時の血流量の比であり、大動脈(冠動脈入口部)のデータは使用しないのが特徴である。
CFRは健常例では3.0~4.0程度であり、径狭窄率が40~50%以上になると狭窄率に相関して急速に低下し、75%以上の有意狭窄ではCFR<2.0となる。
しかし、CFRは左室肥大や糖尿病などの冠細小動脈障害で低下するため、冠動脈の狭窄だけでなく冠微小循環を含めた冠循環の総合的な指標として計測領域の冠動脈血流供給が十分か否かの指標として用いられている2。そのため、FFRとCFRの虚血診断が乖離することも少なくない。FFRで虚血陰性であってもCFR<2.0であれば微小循環障害が強く、反対にFFRで虚血陰性であってもCFRが保たれていれば微小循環が十分に保たれている局所病変であると考えられる。

研究デザイン

JUSTIFY-CFR StudyはAcademic Medical Centre(オランダ)とImperial College London(イギリス)の過去の研究データを統合して後ろ向き解析で行われ、CFR、FFR、iFRが測定された186患者216狭窄が研究対象となっている。CFVR 2.0、FFR 0.8、iFR 0.90をカットオフとし、iFR、FFRとCFRとの相関や虚血診断について検討している。

結果

平均値はFFR0.74±0.17、iFR0.81±0.21、CFVR2.1±0.77であった。患者の2%で不安定狭心症が含まれていたが、ほとんどは安定狭心症を対象としている。
52%は1枝病変で、病変の56%はLAD病変であった。iFRはFFRと比較してCFVRと有意に強い相関関係があることが示された(iFR–CFVR:ρ=0.68[0.60–0.76],FFR–CFVR:ρ=0.50[0.39–0.62];P<0.001)。
また、カットオフ値を用いた虚血診断をROC曲線下面積(AUC:area under the curve) で評価している。iFRの方がFFRよりCFVRと一致することが示され(iFR ROCAUC:0.82 [confidence interval{CI},0.76–0.88], FFR ROCAUC: 0.72 [CI,0.65–0.79]; P<0.001; 図1)、特にこの結果はFFR が0.60~0.90と中等度である病変でより顕著であった(iFR ROCAUC:0.78[CI,0.69–0.86],FFR ROCAUC:0.59[CI,0.48–0.69];P<0.001)。
安静時のPd/Paと比較してもiFRの方が、虚血診断が一致していた(Pd/Pa ROCAUC:0.78 [CI,0.72–0.85];P=0.004)。
さらに、異なるCFVRのカットオフ値を用いてもFFRと比較してiFRの診断能が高いことが示された(表1)。
アデノシン投与下のiFR(iFRa) とiFRとの比較についても解析されているが、負荷を用いないiFRの方が虚血診断が一致していた(iFR ROCAUC:0.82[CI,0.76–0.88], iFRa ROCAUC:0.74[CI,0.68–0.81];P<0.001)。 iFR value >0.90の病変での平均CFVRは2.51±0.7であったが、iFR ≤0.90の病変ではCFVR 1.69±0.6と低値であった (P<0.001)。
iFR≦0.85の患者の平均CFVRは1.44±0.44と低値で、CFVR<2.0が83%,<2.5が99%を占めた。 iFR≦0.9のグループにおいては、最大充血をかけFFR>0.80であった患者においても平均CFVRが2.0を越えず、反対にiFR >0.90であったグループにおいてはFFR≦0.80であっても平均CFVRが2.5と保たれていた(図2)。
iFR >0.90であった患者でFFR≤0.75と虚血診断が乖離したのは4.1%であった。図3にその詳細が示されているが、そのほとんどはCFVRが保たれている患者であった。
FFR≤0.75の患者を、iFR 0.90を境に2群に分けアデノシン負荷での冠動脈血流速度(Coronary Flow Velocity)
[Hyperemic CFV]とCFVRについて検討を行っているが、Hyperemic CFV(iFR≦0.90:24.9±13.4,iFR>0.90:44.7±19.6;p=0.016)とCFVR(iFR≦0.90:1.59±0.58, iFR>0.90:2.8±0.54;p<0.001)はいずれも有意にiFR>0.90で高かった。

考察

この論文では、後ろ向き解析ではあるものの薬物負荷を行うFFRより、負荷が不要なiFRの方がCFRの評価を予測しやすいことを示している。
CFVR2.0をカットオフとした際のiFR0.90およびFFR0.80とのAUCは、iFR(ROCAUC:0.82);Pd/Pa(ROCAUC:0.78);iFRa (ROCAUC:0.74);FFR(ROCAUC:0.72)の順に診断が一致していた。
さらに、異なるCFVRのカットオフ値を用いても結果は同様であった。流体力学の観点から考えると、同じ狭窄を通過する場合には流速が速くなると圧損失が大きくなる。
つまり、最大充血時の冠動脈の血流速度が速いほうが、FFRが低下しやすい。
左冠動脈前下行枝は他枝と比較してFFR値が低下しやすいことは経験的に感じられるが、その要因の一つとして左冠動脈前下行枝の血流速度が速いことが関与していると考えられる。
この論文の共著者であるTim P. van de Hoef はFFR 値とCFR値との間に約30%の診断の不一致があり、特にFFR中等度の病変において生じること、FFRでの虚血診断陽性であったとしてもCFVR が2.0以上では主要心血管イベント(MACE)の発生率が、CFVR2.0未満の病変と比べて低いことを報告している3
CFRは左室肥大や糖尿病などの冠細小動脈障害が影響していることから、この結果が流速と圧損失の問題だけで説明できるわけではないが、少なくとも様々な指標を用いて病態を理解することが重要であると考える。
iFRとFFRの虚血診断の乖離は日常診療の中でも稀にではあるが遭遇する。
今回の論文は後ろ向きの論文でありiFRがCFRの代替指標であるとは言えないが、それぞれの指標の意義や特徴を考慮し、なぜ乖離したのか検討することが重要であるのではないかと考える。

参考文献

1.  Petraco R, van de Hoef TP, Nijjer S, Sen S, van Lavieren MA, Foale RA, et al. Baseline instantaneous wave-free ratio as a pressure-only estimation of underlying coronary ow reserve: results of the JUSTIFY-CFR Study (Joined Coronary Pressure and Flow Analysis to Determine Diagnostic Characteristics of Basal and Hyperemic Indices of Functional
Lesion Severity-Coronary Flow Reserve). Circulation Cardiovascular interventions. 2014;7(4):492-502.
2. 松尾仁司.特集1,マルチモダリティ時代における心筋血流・血流予備能評価の定量評価:CFRとFFR -その類似点と相違点-.日本心臓核医学誌.2017;19(1):6-7.
3. van de Hoef TP, van Lavieren MA, Damman P, Delewi R, Piek MA, Chamuleau SA, et al. Physiological basis and longterm clinical outcome of discordance between fractional ow reserve and coronary ow velocity reserve in coronary stenoses of intermediate severity. Circulation Cardiovascular interventions. 2014;7(3):301-11.

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