Physiology Guided PCIの役割 最新のエビデンスとResting Index

CATH LAB JIN Vol.2 No.1 掲載記事

岐阜ハートセンター 院長 松尾 仁司先生

虚血性心疾患の患者において、血管造影などの画像上に認められる狭窄の程度は、虚血の程度をそのまま反映するわけではない。

これまでに行われた数多くの臨床研究の結果などから、狭窄があっても虚血を認めない病変を有する場合には予後が良く、1年間の死亡または心筋梗塞の発生率は1.0%未満とされる。一方、虚血を有する病変に対して薬物療法を適用した場合には5〜10%、第3世代の薬剤溶出ステントを留置した場合でも2〜3%とされる(表1)。

したがって、狭窄はあるものの虚血が深刻ではない病変については、ステント留置術を先送り(defer)する戦略が、患者の転帰をより良いものにすると考えられる。こうした事実は、実臨床に臨んでいる最前線の医師であっても、個人の経験からは把握しにくいと推察されるが、把握しておく必要がある知見だと考えられる。

虚血の重症度を評価するため、標準的に用いられているのがFFR (心筋血流予備量比) である。プレッシャガイドワイヤを病変遠位部まで挿入し、薬物を投与して最大充血状態 (抵抗血管を最大拡張した状態) となった時点で、狭窄病変の前後の血圧を測定し、比を求めると、狭窄による血流量の減少の程度を知ることができる。

狭窄が全くない血管のFFRは1.0であり、通常、0.75未満を虚血陽性、0.80を超えれば虚血が誘発されないと見なす。FFR0.75から0.80まではグレーゾーンとされるが、その範囲は狭く、虚血を誘発しうる病変かどうかを判断しやすい指標となっている。

一方、血管造影では、血管径の狭窄率が40%から80%までの範囲がグレーゾーンになる。FFRと狭窄率の相関は低く、狭窄の程度と虚血の重症度は一致しないことがわかる。

なお、FFRが低い患者に薬物療法を用いた場合には予後は不良であり、そうした患者にはPCIを適用した方がイベント発生リスクが低いこと、FFRが高い患者では、逆に薬物療法の方がPCIよりイベント発生リスクが低くなることが示されている。

虚血評価の予後は良好

欧州と米国の20施設で実施されたFAME試験では、多枝病変を有する患者を登録し、血管造影で50%以上の狭窄が認められた病変すべてに薬剤溶出ステントの留置を行う血管造影ガイドグループ、または、血管造影で50%以上狭窄が見られた病変のうち、FFRが0.80以下の部位のみに薬剤溶出ステントを留置するFFRガイドグループの2群に無作為に割りつけた。

その結果、1年後までの複合イベント (死亡、非致死的心筋梗塞、再血行再建術) の発生率は、FFRガイド下でPCIを施行した群が有意に低かった。イベントの相対リスクは血管造影ガイドによるPCI施行群に対して約30%低下することが示された(図1)。

FAME2試験では、PCI施行予定の安定冠動脈疾患患者においてFFRを測定し、0.80以下と虚血を有する症例のみを登録、PCI+至適薬物療法、または至適薬物療法のみに割り付けて追跡した。結果は、3年後の時点でPCI+薬物療法群の方が予後が良好だった(図2)。

こうしたエビデンスに基づいて、FFRが0.80以下なら血行再建術を選択し、0.80を超えれば薬物療法を選択するという判断基準が、すでに各国のガイドラインでも強く推奨されるようになっている。

最先端のPCI戦略はより良好な予後をもたらす

SYNTAX II試験によって、虚血評価ガイドPCIが患者の臨床転帰の向上に役立つことが示された。

この試験では、3枝病変を有する患者に対し、最先端のPCI戦略を適用すると予後がどこまで改善するかが検討された。最先端のPCI戦略として、SYNTAXスコア IIを用い、CABGとPCIのいずれを適用しても同等の転帰になると予測された患者を登録し、iFRとFFRを用いて血行再建術が必要な病変を同定し、血管内超音波検査 (IVUS) を行ってステントの選択を最適化した。さらに、完全慢性閉塞 (CTO) の開通には最新の技術を用い、薬物療法はガイドラインに沿って実施した。その結果、iFRとFFRのいずれか、または両方により虚血評価した1177病変中361病変がdeferされた。

これに対して先行実施されたSYNTAX I試験では、左主幹部疾患または3枝疾患で、PCI、CABGのいずれも適用可能と見なされた患者を無作為にPCIあるいはCABGに割り付けた。

これら両試験の参加者を対象として、複合エンドポイント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)と標的病変再血行再建術を合わせたMACCEの1年後までの発生率を比較したところ、SYNTAX IIの患者は、SYNTAX IのPCI群と比較して良好な予後が得られ、CABG群と比較したところ統計学的に同等の結果が示された。

また、SYNTAX IIの患者群とSYNTAX IのPCI群の狭窄病変数には有意な差を認めなかったが、PCIを実施した病変数は、SYNTAXIのPCI群の4.01病変に対してSYNTAXIIの患者群では2.64病変で、有意に少なかった。

2018年5月にパリで開催されたEuro PCR 2018で報告された2年のフォローアップ結果でもSYNTAX IIの登録患者の転帰はSYNTAX I PCI群より有意に良好で、CABG群と同等であることが明らかになった(図3)。

新たなResting Indexも登場

Resting Index (安静時指標) はFFRと異なり、薬剤負荷なしにプレッシャガイドワイヤを病変の遠位部まで挿入すれば測定できる。

安静時指標の一つである瞬時血流予備量比 (iFR) では、カットオフポイントとして0.89が用いられることが多く、DEFINE-FLAIRとiFR SWEDEHEARTという2つの無作為化比較試験により、1年後の転帰はFFR群と比較し、非劣性であったことが報告された。

最近では、iFR以外に複数の安静時指標が登場している。Abbott社が提唱しているRFR (Resting Full-Cycle Ratio) は、拡張期だけでなく、全周期の中で圧較差が最も大きい地点の5心拍の平均値である(図4)。

RFRとiFRの診断精度を比較したVALIDATE RFR試験では、VERIFY-2試験とIRIS-FFR試験のデータを後ろ向きに解析した。その結果は、RFRのカットオフ値はiFRと同じ0.89であり、RFRとiFRの診断精度は同等であることを示している(図5)。

まとめ

  • 血管造影で狭窄が認められても、機能 (虚血) 評価により虚血なしとされた場合にはdeferして薬物療法を、虚血ありの場合には血行再建術を選択すると、予後が改善されることが明らかになっている。
  • SYNTAX II試験で示された最先端のPCI治療、すなわち機能評価の導入、IVUSによるステント選択の最適化、ガイドラインに沿った薬物療法などは、現在では必須の手法となっている。
  • 新たな安静時指標の一つであるRFRは、iFRと同じカットオフ値で同等の診断精度を得ることができ、臨床において同様に用いることが可能である。
<文献>
William F. Fearon et al:Economic Evaluation of Fractional Flow Reserve-Guided Percutaneous Coronary Intervention in Patients With Multivessel Disease.Circulation 122(24):2545?2550,2010
松尾仁司 Hitoshi Matsuo

岐阜ハートセンター院長。
略歴:Johns Hopkins Medical Institutions核医学科
リサーチフェロー、国保高鷲村診療所所長、岐阜県立岐阜病院循環器科主任医長、岐阜県総合医療センター救命救急部長兼循環器科主任医長、豊橋ハートセンター循環器科部長などを経て現在に至る。
資格等:医学博士、日本内科学会 総合内科専門医、日本循環器学会 循環器専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医・指導医、日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)評議員、日本循環器学会東海地方会評議員、日本心血管画像動態学会理事、日本心臓核医学会理事、日本内科学会、日本核医学会、日本心臓ペーシング・電気生理学会

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