田中信大氏に聞くマイクロカテーテル型FFRシステム -ワイヤー型FFRとの比較、ステント留置後のFFR測定の意義-

東京医科大学八王子医療センター 田中 信大先生

田中:ワイヤータイプの選択理由には一番にワイヤーの性能が挙がると思います。それに対してカテーテルタイプでは通常のレギュラーワイヤーを使って操作できます。そのためワイヤータイプではワイヤー自身のトルカビリティーやサポート性というものを問題にせざるを得ないのに対して、カテーテルタイプではそこが全く必要ないということが一番大きな強みになると思います。

田中:カテーテルタイプのメリットは、他のワイヤータイプのものに比べて、構造がシンプルなだけに安定性が十分得られるのではないかと予想されることと、シンプルで早くに計測し始められるということです。通常のルーティンの心臓カテーテル検査の中で機器のセッティングに毎回時間がかかって、FFRの正しい計測値を得るために労力を使うということになると、だんだん測るのが面倒になってしまいます。それがコネクターを差し込むだけですぐ次の瞬間からFFRを計測できるということになれば、普段そんなにFFRを測り慣れていない施設でも使用しやすく、大きなメリットになると思います。
FFRを最近始めた施設、とにかくまず簡便にFFRを始めてみたいという施設、それから時々必要に応じてFFRを測りたいという施設にとっては、シンプルな装置で簡便に早くFFRを測れるということは、大きなメリットになると思います。
一方、カテーテルタイプのどこに懸念を持っているかというと、やはりシャフトの部分がワイヤの2本分ということで少し太い、あるいはセンサーの部分が多少太いことです。2本分が長軸方向に長くなればやはりその影響は出てくるので、本当にワイヤータイプと同じ数値が出るのかは、疑問が残ります。
そこに関しては、やはり今後、通常のワイヤータイプと同じ数値が出るということを大きな研究で出していかないといけません。ワイヤータイプとカテーテルタイプで全く同じというデータが今出ているけれども、これはSingle discrete lesionであれば同じかもしれないけれども、long diffuse lesionでは多少差はあると思います。
その差がどのくらいか、あるいはどのぐらいの病変長だったら差が出るのかということを明らかにしていかないと、どこまでは使っていい、どこからは使っていけないということがまだ現時点では分からないので、そこは今後明らかにしていく必要があります。

田中:それはあると思います。それを数字にするのは難しいですが、ワイヤを入れて末梢まで持って行く時間がFFRに関する手技時間だとすれば確実に通常のワイヤー(を用いて測れるカテーテルタイプ)の方が簡単なわけだし、そうすれば造影剤も少なくなるし、そういう部分での差は当然あると思います。

田中:中等度狭窄に対してFFRを測定しFFR値が良ければDEFERすることができる、すなわちステントを入れなくてもその病変の予後がいいということを証明したのが今までのDEFER study、あるいはFAME studyのデータだったわけです。またNico H.J.Pijls先生(Catharina Hospital, オランダ)の論文などを見ると、FFRの悪い症例に対してステントを入れたらFFR値が良くなり、血流を改善したことで症状もとれるということも報告されています。最近のワイヤータイプのFFRではどうしてもFFR測定後のPCI手技は通常のガイドワイヤーが使われることが多いので、治療後にはFFRはもう測定されません。アンギオ上の狭窄が0%になればもうOKだろうと考えている、ということです。元々アンギオ(だけの虚血評価)が信頼できないからFFRを測っているにも関わらず、治療後の評価がアンギオだけで終わるということにはやはり問題があるわけです。
アンギオでOKというのが本当に血流的にもOKなのか、FFRもOKになっているかどうかの確認をしないと(PCIによって)血流がきちんと回復したとは言えないと思います。従って、治療後(ステント留置後)のFFRを測ることには非常に大きな意味があります。治療後のFFR測定により、ステントの拡張状態、ステントの圧着状態、ステントエッジの解離、さらに残存病変の有意性(残存病変に中等度狭窄があれば当然それが(虚血に)効いているかもしれません)を評価できます。特に左主幹部に50%ぐらいのあまり気にしていない病変を残したとしても、左主幹部はリバースミスマッチを起こしやすい病変なので、PCI後に虚血が残っているという可能性もあります。そういうものは、アンギオガイドだけでやっていると見逃される病変なので、ポストにFFRを測ってみることは非常に大事です。
さらにpost-stent FFRにおいて、アンギオ上狭窄は0%になっているにも関わらず、FFRが0.8に満たない症例が15%ぐらいあって、そういう症例の予後は不良であると考えられています。予後というのは、治療した病変が再狭窄するという意味ではなくて、他の血管で動脈硬化が進んだり、あるいは心不全を起こしたり、ストロークを起こしたり、全身の動脈硬化性病変としての予後が悪いと考えられています。ステント後のFFRは、ステントの問題、それからその血管に残っている病変の問題、さらにはその全身の動脈硬化の問題、その3つのイベントを予測するという意味で非常に重要な指標になります。
ただ実際には、やはりステントを入れた後にもう一回ガイドワイヤーを入れ直すのは時間もかかるし、ステントにワイヤーが引っかかったりすると、せっかく上手く入れたステントが、時には何かトラブルを起こしたりということも無いわけではありません。そういった意味ではカテーテルタイプでFFRを測れば確実にシンプルにpost-stentのFFR値を測れるということが担保されますので、カテーテルタイプが有用である可能性があると思います。

田中:(ステント留置後に)FFRを測ったら(ステント拡張状態の確認ができるという意味で)良いことは間違いないです。あとは、それが医療経済的なベネフィットに見合うかどうかという問題だと思います。これはプレのFFRに関しても一緒で、実はプレのFFRを測ったほうが医療費を削減すると言っていますが、このままステントがどんどん安くなったら、実はFFRを測るよりも測らずにステントを入れたほうが、医療費が安いということになりかねないです。FFRもやはり競争の原理で、それぞれのデバイスの値段が少し下がってくれると医療経済的な効果は大きくなると思います。
ポストに関しても測ったほうが理論的にもいいということは間違いないけれども、それで得られるメリットがどのくらいあって、それによって医療費をどれぐらい抑えられか確認する必要があります。FFRを測ることによる実際のコストも加味して計算した上で医療経済的な比較をすべきだと思います。
測れるならポストにFFRを測ったほうが良いということは徐々にデータが出てきており間違いないです。しかし今後は、医療経済的にも「ステント留置後にFFRを測定すべき」と認められない限りは、術者全員に対してポストのFFR測定を推奨することはできないと思います。医療経済的にもポストFFRのベネフィットの裏付けをとっていくことが、この先5年、10年で(ステント留置後のFFR測定が増えていくかどうか)の課題だと思います。

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