会長・副会長挨拶

2016年にスタートしたFRIENDS LIVEは7年目を迎えました。私が前回に会長を勤めたのは2018年で4年前となります。この時世界は、その前の年(2017年)にBVSの販売中止が決まり、ACCでDEFINE FLAIR、SWEADHEARTが発表され安静時指標のエビデンスが確立し、ESCでSYNTAX-IIが発表されPhysiological & Imaging Guide PCIが理想のPCIとして注目され、PCIのイノベーションがプロダクトイノベーションからプロセスイノベーションへ大きく変革した時でした。国内では中医協が待機的PCIの保険適用に機能的虚血評価を義務付けた年で、FRIENDS LIVEには過去最高の参加者が集まりました。

あれから5年が経過し何が変わったでしょうか?
コロナで多くのことが止められましたが、Physiologyの領域は確実に進化していると振り返ります。ガイドラインには機能的虚血評価に基づく PCIが高いエビデンスレベルで推奨され、多くのカテ室でプレッシャワイアーを用いて虚血評価を行うことが標準的になりました。また、非侵襲的にFFRを評価するFFR-CT、FFR-Angioも臨床現場で使用可能となりました。一方で、ISCHEMIA試験では中等度以上の機能的虚血を有するCCS患者にPCIは胸部症状の改善には有効でありますが、予後は改善しないことが報告されました。またFAME-III試験では多枝疾患患者に対してPhysiological Guide PCIがCABGに対する非劣勢を証明することが出来ませんでした。さらに今年のESCで発表された左心機能の低下したCCS患者に対するREVIVED試験、CKDを有するCCS患者に対するISCHEMIA-CKD EXTEND試験でもPCIはOMTに比較して予後の改善効果は認めませんでした。

このようにCCS患者に対するPhysiological Guide PCIの真価が問われる中で、CMDが注目されています。PCIは太い冠動脈の虚血評価に基づいて施行されてきましたが、微小循環の改善に効果的であるかは明らかではありません。また、PCI後に胸部症状が改善しないCCS患者が20-30%存在し、CMDの関与が示唆されています。冠動脈に有意狭窄を認めないCCS患者には従来のスパスム誘発試験にCMD評価を追加することにより最適な内科的治療による胸部症状の改善が可能となります。虚血評価は太い冠動脈から微小循環へ、プレッシャーからフローへ、深化が必要な時代になっています。

46年前に胸を切らないで狭心症を治したいと夢を抱いて始まったPCIは狭窄部を安全に拡張しそれを保持する治療法としては確立しましたが、QOL、予後改善に寄与するPCIには到達していません。理想のPCIには最適な心筋虚血評価に基づく、最適なPCI+OMTが求められ、これを探求することがPhysiologyの新価に繋がります。Physiologyのこれまでがこれからを決めるのではなく、Physiologyのこれからがこれまでを決めるのです。これからのために、プログラム作成には次世代の先生にも加わっていただくことにし、今回は副会長に和歌山大学の塩野先生にお願いしました。

さあ、皆さん、コロナを超えて、最適なPCIを追求するために立ち上がりましょう。忘れていた、コロナ前の対面での熱いFRIENDSライブを復活させましょう。東京の品川でお待ちしています。

To be involved in medicine, you must innovate.

会長 横井 宏佳(福岡山王病院)


Tokyo Physiology 2023の副会長を拝命しました和歌山県立医科大学の塩野泰紹です。FRIENDS Liveで副会長がおかれるのは今回が初めてですが、そこにはPhysiologyを次の世代へ継承することに加え、若い世代のニーズを汲んでもう一つ次の世代に対してFRIENDS Liveを魅力ある会に、そして本邦におけるPhysiologyの領域をさらに発展させることが意図されていると受け止め、役割を精一杯務めさせていただきます。

Tokyo Physiologyが対面で開催されるのは2019年以来4年ぶりになります。この間、Physiologyに肯定的な報告のみでなく、疑問を唱える研究も複数報告されています。2019年の時点では揺るぎないと考えられていたPhysiology-guided PCIですが、これら研究結果を踏まえて臨床でPhysiologyをどう適応すべきか議論する必要があると考えています。また古くて新しい概念INOCAが注目されますが、この臨床応用についてもまだまだ議論がつきません。そして先端を追うことに加え、Physiologyの正しい評価法や理解など基礎をおさえることも臨床に立脚したFRIENDS Liveの重要な役割です。

基礎から最先端までPhysiologyのシンカ(進化、深化、真価、新価)を学んでいただける内容になっています。久しぶりに対面にて皆様と一緒に学べる機会を楽しみにしております。

副会長 塩野 泰紹(和歌山県立医科大学)