FFR/iFRの有効活用を探る【Physiology Today 対談】

札幌ハートセンター 理事長 藤田 勉先生
東京医科大学八王子医療センター循環器内科 教授 田中信大先生

臨床現場でFFR/iFRをどう使うか

田中:虚血の度合いをしっかり把握するには,やはりFFR/iFRが最適です。札幌心臓血管クリニックではFFR/iFRをかなりお使いになられていますね。

藤田:FFRは2009年の11月から使っています。去年は2,539件のPCIに対してFFRを実施したのが387件でした。カテ室の患者はすべて私の患者という意識を持っているので,できるだけ無駄なPCIは減らしたい反面,必要なPCIを見逃したくないという思いから,FFRを導入することにしました。外来はすべて私が診ています。

田中:診断プロトコルはどうされていますか。

藤田:確認作業のためだけのCAGは患者の負担感が強く評判が悪いため,当院ではまずCT検査をします。有症状でMLDが1.8mm以下や狭窄が75%以上の場合はそのままPCIをするのですが,症状が微妙な場合や無症状の場合でも,狭窄度が50%以上ある場合にはCAGを行ってFFRを測ります。FFRが陰性であればdeferです。石灰化病変が疑われる患者のFFRを測ると,無症状でも35%がPCIになっています(図1)。ニトロで治まるような簡単な狭窄や,狭窄度が50%未満の患者には,基本的にカテはしていません。診断カテのトラブルはゼロではないので,なるべくやりたくないのです。

CTとFFR/iFRの相性は良い

田中:診断カテをあまりされないとすると,CTの質を担保することが重要になりますね。

藤田:そこは単科施設の強みです。当院のCT検査は,全例冠動脈CTですし,件数も年間1万件位です。必然的にCTを撮る放射線技師の腕も上がっていくので,黙っていても質は上がっていきます。

田中:冠動脈の走行領域に対する心筋量を定量評価できるCTとFFR/iFRを組み合わせれば,かなりのエビデンスが得られると思います。アンジオガイドよりも良い結果が出るかもしれません。

藤田:CAGは基本中の基本ですから疎かにはできませんが,カテーテル治療の要否の判断に関しては,CTとFFR/iFRがあればほぼ大丈夫だと感じています。カテーテル治療は症状を取ることが第一だと思っていますので,有症状でCAG上75%の狭窄ならPCIを選択します。しかし,CAGでは75%狭窄なのに無症状といった患者にPCIをする必要があるのかをずっと悩んでいました。FAME試験の結果が出た時,「これだ」と思いました。無症状の75%や50%狭窄にPCIを施行する裏づけがFAME試験です(図2)。私はFFRは必須だと考えています。

田中:FAME試験は,複数の血管にFFRを施行して虚血が陰性であれば,余分なPCIをしなくて済むということがテーマでした。そしてFAME2試験は,安定狭心症であればまずはOMTという治療戦略に一石を投じた試験で,FFRで病変が有意と判断されればOMTのみだとイベントにつながりうるという結果でした。これでFFRは,deferするための道具からPCIが有効な病変を探すツールという意味合いになりました。

FFR/iFRがもたらした変化

藤田:FFR/iFRをするようになって患者への説明がすごく楽になりました。無症状でも,圧較差が2割以上あれば治療すべき,というエビデンスがあるので,患者も納得してくれます。また,現場では,FFR/iFRを施行することによって他部門とのコミュニケーションも変化します。例えば,エビデンスはまだこれからですが,当院はFFR値0.75以下でないとCABGは行いません。

田中:それはぜひ出していただきたいですね。

藤田:今後検討したいと思っています。外科の先生方もFFR/iFRの意味を理解していて,CABGの際には必ずFFR/iFR値を聞かれるくらい大変役に立っています。コメディカルやカテ部門とのチームワークがさらに良くなりました。

田中:確かにコメディカルの教育も必要ですね。MEのセッティングやVFに対処するための看護師のスタンバイ。そうしたコメディカルの気配りと経験は必要だと思います。当院では施設の見学希望がある場合には,ご施設のMEを必ず呼んでいただきたいとお願いしています。

藤田:セットアップがうまくいかなければ正確に測れませんし,急変にすぐに対応するにはMEの協力が不可欠です。当院はIVUSやFFR/iFRといった機器類のセットアップはMEの仕事なので,医師と同じように勉強してもらっています。コメディカルもほぼ医師に匹敵する知識を持っているので,ドクターがなにか間違えたことをするとコメディカルがその場で注意をしてくれて,僕にすぐ教えてくれます(笑)。

田中:常に第三者の視点で観察してくれるため,コメディカルがFFR/iFRについて言及できるようになると,本当に良いチームになってきます。

FFR/iFRとPCI件数

田中:当院ではFFR/iFRのない診療は考えられませんし,FFR/iFRの導入による症例数の増減など考えたこともありません。札幌ハートセンターではいかがですか。

藤田:FFR/iFRの導入は当院にとってはプラスに働きました。無症候性で50%くらいの狭窄の人にFFR/iFRを施行すると,35%くらいは陽性になるので,FFR/iFRを導入してからPCIの件数は増えた印象があります。一般的にはdeferする症例が増えたことでPCIの件数が減るのではと言われていますが,そのような施設はただただ狭窄の見た目だけに頼って治療してきたのではないでしょうか。FFR/iFRがイどでは,今まで見逃されていた症例を拾い上げることができるので,症例数が減るということはないと考えています。FFR/iFRは数字が出るので,治療する根拠が明確になります。そうした理由からか,今は保険指導医も症状詳記でFFR/iFR値を聞いてきます。保険指導医に聞かれると,すごく嬉しくなります。一方,「CTOを治療しました」と書いて「このFFRはいくつですか」と聞かれることもあります。残念です。

FFR/iFRの導入にあたって

藤田:昨今はデバイスも良くなって安全なので,FFR/iFRの導入に特段ハードルはないと思います。ただしFFR/iFRの概念は毎年微妙に変わっていくので,知識や技術のアップデートは必要です。

田中:技術的にはPCIを施行しているどんな施設でも導入できるはずです。最初はピットフォールがあるので少し注意が必要ですが,特に問題にはならないでしょう。しかし,すべてがFFR/iFRありきではないことは知っておいてほしいと思います。医学書で最初に勉強するのは,病気ではなく人間を見るということです。患者全体を診ることなしにFFR/iFRの値だけでPCIの適応は判断することはできません。

藤田:その通りですね。数字に振り回されてはいけない。例えばFFR値が0.82の患者にPCIを施行して症状が取れたとします。しかし,他の先生はFFR値0.82だったら薬物療法で十分と言われるかもしれません。患者は胸の痛みや症状を取るために来ています。それを治してあげないと,患者には何も伝わらないのです。

田中:症状があって0.82という場合には,実はFFRをうまく測れていない場合が多くて,きちんと測れば0.75以下ということがよくあります。そのような場合には有意狭窄を見逃してしまいます。確かに,きちんと測っても0.82ということはあります。FAME試験の結果からもPCIを施行しても3割程度で症状が取れないといわれています。そのあたりをどう判断するかというのがクリニシャンだと思います。FFR/iFRは最も定量的かつ簡単なものだと思いますが,FFR/iFRありきではなく,総合的に判断することが重要です。

客観的指標として最も簡便で正確なFFR/iFR

藤田:実はAngioガイドほどアバウトなものはありません。対して,FFR/iFRは数字として客観的に見ることができます。

田中:FFRはもともと冠血流を知る指標です。FFRの原理は非常に単純で,FFR値が0.50なら正常の50%しか血流がなく,0.50が0.90になれば血流が50%から90%まで改善したということを示します。そのため,解釈もしやすく,患者にも理解してもらいやすい,非常に良い指標です。しかし,計測にあたり最大充血にする必要があるので,血管拡張薬を負荷しなければなりません。薬によって少し不整脈や症状が出ることがあるので,より簡便かつ負荷をかけずに同じような情報を得られないかと考えられたのがiFRです。2017年3月のACCではFFRとiFRを直接比較するDEFINE-FLAIR試験の1年フォローの結果が報告されることになっているので期待されています。「FFRとiFRから得られる情報は臨床的に同等である」という結果が出ると思われますし,iFRの普及はさらに加速化するでしょう。

導入を検討している施設へのアドバイス

田中:ご自身の実体験から,FFR/iFRをこれから取り入れようかと考えている施設にはどうアドバイスをされますか。

藤田:iFRに関してはきちんとやらなければ偽陽性を出してしまうし,FFRに関してはきちんとやらないと陽性を見逃してしまう。そのため,最初は指導の先生に来てもらったほうが良いでしょう。そして,FFR/iFRは患者のために絶対にやるべきです。

田中:私はFFR/iFRの普及のためであれば,お声がかかれば何時でも何処でも伺いますよ(笑)。PCIのオプレーターであれば,FFR/iFRは問題なくできます。しかし,ちょっとしたコツとピットフォールがあるので,最初にしっかり勉強してほしいです。使っているうちに自分の懐刀になるのではないかと思います。

藤田:そして,質の高いCTが撮れれば侵襲的なCAGを避けられるので,患者のメリットにつながりますし,実はコストも削減できます。他のご施設でもCTを積極的に取り入れてほしいです。

治療指標としてFFR/iFRを活用すべき

藤田:定量化という意味でIVUSとFFR/iFRを考えると,IVUSはプラークの性状を見ることはできても,虚血があって治療すべきかどうかは分かりません。要するに,CAGと何ら変わらず,予後を推定できるかもしれないという程度です。それは薬物療法でも同じでしょう。

田中:そうですね。IVUSが必要なのは主にステントの留置戦略においてです。

藤田:無症候性でのことを考えると,PCI治療の指標になりうるFFR/iFRは近い将来,ガイドラインに収載されてもおかしくないと思います。

田中:欧州と米国のガイドラインにはすでに載っていますが,日本のガイドラインには収載されていません。施設基準もあるでしょうし,日本のガイドラインに記載されるにはまだ少し時間がかかるでしょう。まずはFFR/iFRを隅々まで浸透させることが大切です。

(2016年9月2日札幌心臓血管クリニック)

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